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アユサワ時計店
哀惜の万年筆
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父親が亡くなって30年を経過しようとしています。
もう、そんなになるのかと感慨深いものがあり、
私と向かい合って仕事をしていたので、
別離の念は今もって強く、あれも聴きたかった、
これも教えてもらいたかったと後悔ばかりが
先にたちます。

書を習っていた父親の誕生日に、
清水の舞台から飛び降りた気持ちで
モンブランの太軸万年筆と靴の形をしたブラック色の
インク壷をプレゼントしました。
大事に使ってもらい、いまは後釜として
私が手にしているのですが、
近頃では万年筆を使う機会もめっきりと少なくなり、
手短の筆記具としてボール・ペン使用が多くなっています。

先日、思いたってブルーブラックのインクを求めました。

バケツに水を満たして黒色インクが入った万年筆を
入れると、マーブル模様の渦が揺らぎます。
水はゆったりと広がり、紫色に変色をみせます。
尻軸を回し、中に入っていたインクを圧縮させると、
蛸が墨を吐くように噴出します。
表面の水の色が徐々に変わり、手に持った万年筆を
揺すると一気に混ざり合います。

それは、口の中で舐めていた
変わりだまを噛み砕いた感じと似ており、
陽だまりのなかでのインク交換は、靴磨きと同様に
私の好きな作業の一つとなっています。

幾度かバケツの水を取り替えているうちに、
手のひらはインクの色で染まり、手元にある雑巾も
黒インクで染まっていたものが青色に替わっていました。

水を切って新しいインクツボに差込み、
白いメモ用紙に字をなぞると水色のインクが
滑らかに息を弾ませながら航跡を見せます。
仕事机に置かれてある父親の写真に目をやりました。
今年も残ること後半分。
父親の年から又一歩足を進めました。

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テーマ:小さな幸せ - ジャンル:心と身体


時計屋の悲しみ!
時計屋の悲しみ!

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お顔は存じ上げないのだが、
相手は当方のことを知っているらしく、共産党、
地区委員長の方を同伴して当方のもとにお出でになった。
しんぶん赤旗の日曜版を購読していただけないかと
勧誘を受けたのだが、お断りをすると見本の
日曜版を置いてゆかれた。

タブロイド版の紙をめくると26面に「読者のページ」とある。
読者が投稿された記事は、それぞれ問題意識が立ち上り、
なるほどと納得されるそれであった。

そのなかに、徳島県にお住まいの71歳、女性から
「時計屋がない」と、ただならぬ投書が寄せられていた。
これは捨て置けぬと目を点のようにして文字を追った。

【腕時計の電池が切れ、以前交換してもらった
隣町の量販店へ行こうとした。
が、前あった場所にない。
他の店になっていた。
次にホームセンターへ。
ここも取り扱いをやめたという。
私の住む町は、徳島市近郊の町として県内一発展中といわれ、
大型ショッピングセンターやドラッグストアーが次々と進出している。
でも、小さな時計屋さんさえない。これが「発展」の真実の姿】。

近年、情報端末機器の普及によって、
腕時計を持たない若い人が多くなってきた。
ために、時計屋が苦戦することになっているのだが、
さらに時計技能の受け継ぎが、うまく作動していない。
直せる人が少なくなってきた。
物が安く出来るようになり、直すなら買い換えると言った
安易な考えが拍車をかけているものと思われるが、
なくなった物は立ち上げるのには、かなりの労力が伴う。

はて、さてと、なかなか腕組みが解けない